高崎だるまは、古紙などを原料に丸い生地を作り、乾燥させ、底のおもりとなるヘッタを付け、胡粉で下塗りしてから色、顔、文字を重ねて完成します。最初から目が白く残されているのは未完成だからではありません。手にした人が願いを込めて目を入れられるようにするためです。
ここで紹介するのは、職人のもとで完成品ができるまでの製造工程です。白いだるまに自分で色や模様を描きたい方は、自宅でできるだるまの絵付け方法をご覧ください。
だるまの材料
高崎だるまの主な材料は、紙、底のおもり、下地、塗料、墨です。工房や作り方によって細部は異なりますが、工程を理解するうえでは次の材料を押さえておくと分かりやすくなります。
| 材料 | 役割 |
|---|---|
| 古紙などの紙原料 | 丸い本体の生地を作る |
| ヘッタ | 底に重心を置き、起き上がりやすくする |
| 胡粉などの下地材 | 紙の表面を整え、色をのせやすくする |
| 赤などの塗料 | 胴体の色を作る |
| 金色の顔料や絵具 | 胴や側面の装飾、文字に使う |
| 墨など | 眉、ひげ、輪郭、文字を描く |
紙を使う点は昔ながらの張り子と共通しています。ただし、多くの高崎だるまでは、溶かした古紙などの原料を型に吸着させる真空成形が使われています。
高崎だるまの作り方を9工程で見る
| 工程 | 主な作業 | 仕上がりへの影響 |
|---|---|---|
| 1. 生地づくり | 紙の原料を型に合わせて成形する | 全体の形と厚みが決まる |
| 2. 乾燥 | 成形した生地の水分を抜く | 変形を抑え、後の塗りを安定させる |
| 3. ヘッタ付け | 底におもりを付ける | 起き上がりやすさと安定感を作る |
| 4. 下地づくり | 表面を整え、胡粉などを塗る | 胴の色や顔の線をのせやすくする |
| 5. 胴の着色 | 本体を赤などの色で塗る | だるまの外観の土台を作る |
| 6. 顔の下地 | 白目、小鼻、口などを描く | 表情の基礎を整える |
| 7. 文字・装飾 | 胴や側面に文字や金彩を入れる | 願いや用途を表す |
| 8. 眉・ひげ | 墨などで顔を仕上げる | 一体ごとの表情が決まる |
| 9. 乾燥・検品 | 塗りを乾かし、全体を確認する | 白目を残した完成状態に整える |
高崎だるまができるまでを動画で見る
紙の生地づくりから顔描き、文字入れまでを映像で見ると、表の各工程がどの作業に当たるかをつかみやすくなります。
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1. 紙から生地を作る
最初に、だるまの丸い本体となる「生地」を作ります。高崎だるまの現代的な工程では、湿らせた古紙などを水の中でほぐし、紙の繊維が混ざった原料を用意します。
その原料を型に吸着させるのが真空成形です。水分を抜きながら紙の繊維を型に沿わせることで、同じ形の生地を効率よく作れます。
一方、昔ながらの手張りでは、型に紙を少しずつ貼り重ね、乾いてから型を外します。どちらも紙から本体を作りますが、紙を型に沿わせる方法が異なります。
2. 成形した生地を乾燥させる
型から外した生地には水分が残っています。そこで、形を崩さないようにしながら十分に乾かします。
乾燥が不十分なまま次へ進むと、表面がゆがんだり、下地や塗料が安定しにくくなったりします。乾かす時間も、形と仕上がりを左右する大切な工程です。
3. 底にヘッタを付ける
乾いた本体の底に、ヘッタと呼ばれるおもりを付けます。重心が下に集まることで、だるまは傾いても元の姿勢に戻りやすくなります。
丸い形と底の重みが組み合わさり、「転んでも起き上がる」というだるまの象徴が、実際の動きとして表れます。
4. 表面を整え、胡粉で下塗りする
紙の生地には細かな凹凸があります。そのまま色を塗るのではなく、表面を整えてから胡粉などの白い下地材を重ねます。
下地を作ると紙の繊維が目立ちにくくなり、胴の色が均一に見えやすくなります。後で描く細い顔の線や文字をきれいにのせるためにも欠かせません。
5. 胴体を赤く塗る
下地が乾いたら、本体を赤く塗ります。赤は高崎だるまの代表的な色ですが、現在は白、黒、金、青など、目的や好みに合わせた色も作られています。
塗り重ねる回数や乾燥時間は工房によって異なります。大切なのは、下の紙や白い下地が透けず、表面の色が整うことです。色ごとの意味はだるまの色の意味で比較できます。
6. 顔の下地を描く
胴の色が整ったら、目の周り、小鼻、口など、顔の下地を描きます。白目を入れることで、後から願掛けの目を描き込める状態になります。
この時点では、左右の目に黒い瞳を入れません。白く残した目も、完成品としての大切な仕様です。
7. 胴や側面に文字を入れる
だるまの正面や側面には、願いを表す文字や金色の装飾が描かれます。「福」や「大願成就」など、入る言葉は用途や注文内容によってさまざまです。
文字は装飾であると同時に、そのだるまが何を願うものかを示す部分です。腹文字や祈願文字の選び方は、だるまに書く言葉と文字で詳しく紹介しています。
8. 眉とひげを描く
仕上げに近づくと、墨などを使って眉やひげを描きます。同じ形の本体でも、線の太さ、勢い、目の周りや口元の描き方によって表情は大きく変わります。
高崎だるまの眉を鶴、ひげを亀に見立てる説明もあります。顔の線に縁起のよい意匠を重ねながら、職人が一体ずつ表情を整えていきます。
9. 乾燥させて仕上がりを確認する
顔や文字を描き終えたら、塗料や墨を乾かします。にじみ、欠け、表面の乱れがないかを確かめ、白目を残した状態で仕上げます。
こうして、願いを受け取る前のだるまが完成します。購入した人は願いや目標を決めて片方の目を入れ、達成したときにもう片方を描きます。目を入れる順番には地域差もあるため、詳しくはだるまの目入れ方法をご確認ください。
張り子と真空成形の違い
「だるまは張り子」と説明されることがありますが、すべてが同じ工程で作られているわけではありません。
| 作り方 | 生地の作り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 手張り | 型に紙を貼り重ね、乾かしてから外す | 昔ながらの手仕事として各地の民芸に残る |
| 真空成形 | 紙の原料を型に吸着させ、水分を抜いて成形する | 高崎だるまの現代的な生産で多く使われる |
| 家庭工作 | 新聞紙、紙粘土、風船などで形を作る | 子どもの工作や自由研究向け |
| 絵付け | できあがった白い本体に色、顔、文字を描く | 自宅体験やワークショップ向け |
地域や工房によって、材料、成形方法、工程の順番、分業のしかたは変わります。このページの9工程は、高崎だるまを理解するための基本的な流れです。
製造と自宅での絵付けは別の工程
紙の生地から本体を作るには、型、乾燥設備、下地づくりなどが必要です。家庭で一から同じ工程を再現するのは簡単ではありません。
自宅でだるま作りを楽しむなら、すでに形ができた白いだるまに色や顔を描く方法が始めやすいでしょう。形づくりを職人に任せる分、色、模様、文字、願いに集中できます。
完成しただるまを選ぶ方法と、自分で絵付けする方法は目的が違います。置き物として迎えるなら完成品を、作る時間も楽しみたいなら絵付けを選ぶと分かりやすくなります。
よくある疑問
だるまは何でできていますか?
伝統的なだるまの本体は、主に紙でできています。高崎だるまでは、古紙などを水でほぐして型に吸着させる真空成形が多く使われ、底には起き上がりやすくするヘッタが付きます。表面には胡粉などの下地材、塗料、墨も使われます。
だるまはすべて張り子ですか?
紙を使うという意味では張り子の仲間として説明されますが、作り方は同じではありません。型に紙を貼る手張りもあれば、紙の原料を型に吸着させる真空成形もあります。
目が入っていないのは製造途中だからですか?
いいえ。願いを決めたときに片目を入れ、かなったときにもう片方を入れるため、白目を残した状態で完成品として販売されます。飾りや贈り物向けに、最初から両目が描かれたものもあります。
高崎だるまの作り方は全国共通ですか?
全国共通ではありません。地域、工房、時代によって、紙の成形方法、乾燥、着色、顔描き、文字入れの順番や分業が異なります。高崎が産地として発展した背景は、高崎だるまの歴史で説明しています。
自宅で作るなら何から始めればよいですか?
初めてなら、紙から本体を作るより、白いだるまへの絵付けから始めると取り組みやすくなります。色、顔、文字を自分で決められ、完成後は願いに合わせて目入れへ進めます。
紙の生地、ヘッタ、胡粉、色、顔、文字。完成した姿からは見えにくい工程を知ると、なぜだるまが起き上がり、目を白く残しているのかも分かります。全体の意味や使い方まで知りたい方は、だるまの完全ガイドもあわせてご覧ください。






